「確定申告」と聞くと、それだけで気が重くなる花屋さんも多いのではないでしょうか。 日々の仕入れ・接客・配達に追われるなか、レシートは箱にたまる一方——。 でも、ポイントを押さえれば確定申告はこわくありません。 それどころか、正しく申告すれば納めすぎていた税金を取り戻せることも珍しくありません。
この記事では、個人事業主の花屋さんを対象に、 確定申告の基本を「専門用語をかみ砕いて」解説します。 とくに、花屋ならではの経費の考え方(仕入れ・廃棄・資材・配達・冷蔵庫の電気代など)と、最大65万円の青色申告特別控除による節税のインパクトを、 図と具体例でわかりやすくまとめました。
📌 この記事でわかること
- 花屋(個人事業主)に確定申告が必要かどうかの目安
- 青色申告と白色申告の違いと、花屋にどちらが向くか
- 花屋特有の「経費になるもの」一覧と家事按分の考え方
- 最大65万円控除で、実際にどれくらい節税できるか
- 帳簿づけと売上集計を、日々の仕組みで楽にする方法
そもそも、花屋に確定申告は必要?
結論から言うと、お店で利益(事業所得)が出ている個人事業主は、原則として確定申告が必要です。 大まかな目安は、1年間の売上から経費を引いた「もうけ」から、 さらに各種の所得控除を引いて、なお課税される所得が残るかどうか。 残るなら申告して税金を納めます。
ここで大切なのが、「売上」ではなく「もうけ(所得)」に税金がかかるという点です。花屋は仕入れや資材、配達コストなど経費が多い業種。経費をきちんと計上するほど課税される所得は小さくなり、税金も減ります。 だからこそ、確定申告は「面倒な義務」であると同時に、払いすぎを防ぐチャンスでもあるのです。
💡 赤字でも申告しておくと得なことがある
その年が赤字でも、青色申告なら損失を翌年以降(最長3年)に繰り越して、 黒字になった年の所得と相殺できます(純損失の繰越し)。 開業初年度など赤字になりやすい時期こそ、申告しておく価値があります (出典: 国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」)。
青色申告と白色申告 ― 花屋はどっち?
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。 ざっくり言えば、青色=ちょっと手間がかかる代わりに節税メリットが大きい、白色=帳簿は簡単だけど優遇が少ない、という関係です。
| 比較ポイント | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 特別控除 | 最大65万円 | なし |
| 帳簿づけ | 複式簿記(65万・55万) 簡易簿記(10万) | 簡易な記帳 |
| 家族への給与 | 全額を経費にできる (青色事業専従者給与) | 上限あり (事業専従者控除) |
| 赤字の繰越し | 最長3年 | 原則不可 |
| 30万円未満の備品 | 一括で経費にできる (少額減価償却の特例) | 原則10万円まで |
| 事前の届出 | 必要(青色申告承認申請書) | 不要 |
花屋のように仕入れ・在庫・経費の動きがある事業では、 節税メリットの大きい青色申告がおすすめです。 「複式簿記なんて無理…」と感じるかもしれませんが、 後述の会計ソフトを使えば、 日々の入力から複式簿記の帳簿まで自動で作れます。 ハードルは、昔よりずっと低くなっています。
⏰ 青色申告には「事前の届出」が必要です
青色申告をするには、原則としてその年の3月15日まで(新規開業なら開業から2か月以内)に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出しておく必要があります。 出していなければ自動的に白色申告扱い。 「来年こそ青色で」と思ったら、早めの届出がカギです。
65万円・55万円・10万円 ― 控除額の違い
青色申告の目玉が「青色申告特別控除」。 記帳と申告の方法によって、控除額が65万円・55万円・10万円の3段階に分かれます👇
青色申告特別控除の3段階
いちばん手厚い。会計ソフト+e-Taxが定番ルート
帳簿は同じでも、紙提出だと10万円ぶん少なくなる
帳簿づけが簡単な代わりに控除も小さい
ポイントは、複式簿記で記帳し、e-Taxで電子申告するだけで、 最大の65万円控除が受けられること。 紙で提出すると55万円に下がってしまうので、e-Taxはそれだけで「10万円の価値」があると考えてよいでしょう。
【具体例】65万円控除で、いくら節税できる?
「控除65万円」と言われても、実際いくらお得なのかピンと来ないですよね。 そこで、所得税と住民税をあわせた節税イメージを見てみましょう。
日本の所得税は、課税所得が大きいほど税率が上がる累進課税です。あわせて、住民税がおおむね一律10%かかります👇
| 課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 〜 194万9千円 | 5% | 0円 |
| 195万円 〜 329万9千円 | 10% | 97,500円 |
| 330万円 〜 694万9千円 | 20% | 427,500円 |
| 695万円 〜 899万9千円 | 23% | 636,000円 |
| 900万円 〜 1,799万9千円 | 33% | 1,536,000円 |
※所得税の速算表より一部抜粋(別途、復興特別所得税がかかります)。出典: 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」
たとえば、課税所得が195万円〜330万円の花屋さんの場合、 所得税10%+住民税10%で、実質の負担率はおよそ20%。 この場合、65万円の控除があると——
65万円控除の節税イメージ(所得税10%+住民税10%の場合)
65万円 × 約20% ≒ 約13万円。毎年ずっと効いてくる差です
※ あくまで概算イメージです。実際の税額は所得・各種控除・税率により異なります。国民健康保険料など所得に連動するものにも波及するため、実際の効果はさらに大きくなることもあります。
記帳の手間はかかっても、年間で十数万円クラスの差になり得ます。 会計ソフト代(年1〜2万円程度)を差し引いても、じゅうぶんお釣りが来る計算です。
花屋の「経費になるもの」一覧
節税の基本は、事業に使ったお金をもれなく経費に計上すること。 花屋には、ほかの業種にはない特有の経費がたくさんあります。 代表的なものを整理しました👇
| 勘定科目の例 | 花屋での具体例 |
|---|---|
| 仕入高(売上原価) | 生花・鉢物・観葉植物の仕入れ。市場・仲卸・産地直送の代金 |
| 消耗品費・材料費 | ラッピング・リボン・フローラルフォーム・鉢・花器・延命剤・ハサミ |
| 水道光熱費 | 冷蔵ショーケースの電気代、店舗の水道・ガス。花屋は水と電気の使用量が多め |
| 車両費・旅費交通費 | 配達の車のガソリン・駐車場・車検・保険、市場への仕入れ交通費 |
| 地代家賃 | 店舗・作業場・資材倉庫の家賃、駐車場代 |
| 広告宣伝費 | チラシ・看板、Instagram広告、ホームページ・予約システムの利用料 |
| 通信費 | 店舗の電話・インターネット、スマホ(事業使用分)、LINE配信ツール |
| 荷造運賃・支払手数料 | 宅配便の送料、キャッシュレス決済の手数料、振込手数料 |
| 減価償却費 | 冷蔵ショーケース・配達車・レジなど、高額な設備を年数で分けて経費化 |
🌸 「売れ残って捨てた花」はどう扱う?
花屋につきものの廃棄ロス。売れ残って処分した花も、仕入高として計上していれば、結果的に経費に含まれています。 在庫として売れた花の原価だけでなく、 仕入れた花全体が費用として反映される仕組みなので、 あわてて別枠の「廃棄損」を大きく立てる必要は基本的にありません (在庫を厳密に棚卸しする場合の扱いは会計ソフトや税理士に相談を)。
🚗 自宅・自家用車と共用しているものは「家事按分」
自宅の一部を作業場にしている、自家用車で配達もしている——そんなときは、事業で使っている割合(家事按分)だけを経費にできます。たとえば車を「配達7割・私用3割」で使うなら、 ガソリン代や保険料の7割を経費に。 割合の根拠(走行距離・使用時間・面積など)を メモしておくと、あとで説明しやすくなります。
令和7年分の確定申告で変わったこと
令和7年度(2025年度)の税制改正で、 所得税の基礎控除が見直されました。 これは令和7年分(2026年の確定申告)から関係してくる大きな変更点です。
これまで一律48万円だった基礎控除が、原則58万円に引き上げられました。 さらに令和7年分・令和8年分は暫定的な上乗せがあり、 合計所得金額に応じて最大95万円まで手厚くなります (出典: 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」)。
基礎控除の見直し(イメージ)
合計所得金額に応じて63・68・88・95万円と段階的に上乗せ(暫定措置)
※ 暫定的な上乗せは令和7年分・令和8年分が対象。金額区分は合計所得金額により異なります。最新の適用条件は必ず国税庁のページでご確認ください。
基礎控除が増えるということは、その分だけ課税される所得が減るということ。青色申告特別控除とあわせれば、課税所得をぐっと圧縮できる年になります。 該当しそうな花屋さんは、確定申告書を作るときにご自身の所得に応じた基礎控除額を確認しましょう。
帳簿づけと売上集計を「仕組み」で楽にする
青色申告のハードルだった複式簿記は、いまや会計ソフトで大きく下がりました。freee・マネーフォワード クラウド・弥生などが定番で、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、複式簿記の帳簿・決算書・確定申告書までまとめて作成できます。
ただ、会計ソフトを入れても最後まで手間が残りやすいのが「売上の集計」です。 電話・店頭・LINE・FAX…と注文の入口がバラバラだと、 確定申告シーズンに1年分の売上を手作業でかき集める羽目になります。
ここで効いてくるのが、日々の受注をデジタルで残しておくこと。 注文をwebフォームやLINEで受け、金額・日付・内容がデータとして自動でたまっていく状態にしておけば、 確定申告の売上入力は「集計済みの一覧を見るだけ」に近づきます。受注のデジタル化は、そのまま「申告の下ごしらえ」になるのです。
📒 確定申告がラクになる「日々の3習慣」
- 事業用の口座・カードを分ける — プライベートと混ざらないだけで、集計が一気に楽に
- レシート・領収書はその場で撮る — 会計ソフトのアプリで撮影して自動仕訳
- 注文はデータで残す — 売上を手集計しないで済む状態にしておく
確定申告の進め方 ― 5ステップ
はじめてでも迷わないよう、1年の流れを整理しました。 ポイントは「日々ためて、シーズンにまとめる」です。
(開業したら)青色申告承認申請書を出す
青色申告をするなら、その年の3月15日まで(新規開業は開業から2か月以内)に税務署へ。まずここが出発点。
1年を通して帳簿をためる
会計ソフトに口座・カードを連携し、日々の売上・経費・レシートを記録。ためこまず、こまめに。
1〜2月に売上・経費を確定させる
1年分の売上と経費を集計し、もれがないかチェック。家事按分の割合もこのタイミングで決めます。
確定申告書・決算書を作成
会計ソフトなら、帳簿から青色申告決算書と確定申告書をほぼ自動で作成できます。
期限内にe-Taxで提出・納税
例年、申告期限は翌年3月15日ごろ。e-Taxで提出すれば65万円控除の要件も満たせます。納税・還付もこの流れで。
「自分ひとりでは不安…」という場合は、地域の税務署の相談窓口・記帳指導や、青色申告会・税理士に相談するのが近道です。 最初の1年だけプロに教わって、翌年から自分で回す花屋さんも多くいます。
よくある質問(FAQ)
Q. 花屋(個人事業主)は確定申告が必要ですか?
A. お店の利益(事業所得)がある個人事業主は、原則として確定申告が必要です。売上から経費・各種控除を引いて課税所得が残るなら申告して納税します。赤字でも、青色申告なら損失を翌年以降に繰り越せるため申告しておくメリットがあります。
Q. 青色申告と白色申告、花屋はどちらがおすすめ?
A. 節税面では青色申告がおすすめです。複式簿記+e-Taxで最大65万円控除、家族への給与や30万円未満の備品の一括経費化、赤字の繰越しなどのメリットがあります。会計ソフトを使えば複式簿記のハードルは大きく下がります。
Q. 仕入れや廃棄した花は経費になりますか?
A. 花・資材の仕入れは経費(売上原価)になります。売れ残って廃棄した花も、仕入れとして計上していれば結果的に経費に含まれます。ラッピング資材、配達の車両費・ガソリン代、冷蔵ケースの電気代、家賃、通信費なども経費に。プライベート共用のものは事業割合で家事按分します。
Q. 帳簿づけを楽にする方法は?
A. 会計ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)で口座・カード明細を自動取り込みすれば、複式簿記の帳簿を自動作成できます。さらに、日々の注文をLINEやwebフォームでデータ化しておくと、売上集計の手間が大きく減ります。
まとめ
- ✅ 利益が出ている個人事業主の花屋は、原則として確定申告が必要。「売上」ではなく「もうけ」に課税される
- ✅ 節税面では青色申告がおすすめ。複式簿記+e-Taxで最大65万円の特別控除
- ✅ 65万円控除は、実質負担率20%の花屋なら年間およそ13万円の節税インパクト
- ✅ 仕入れ・廃棄・資材・配達・冷蔵庫の電気代など、花屋特有の経費をもれなく計上。共用分は家事按分
- ✅ 令和7年分から基礎控除が48万円→原則58万円(暫定で最大95万円)に引き上げ
- ✅ 会計ソフト+受注のデジタル化で、帳簿づけと売上集計は仕組み化できる
確定申告は、こわがるより「毎年の仕組み」に落とし込むのが正解です。 そして、その仕組みの土台になるのが日々の注文をきれいなデータで残しておくこと。 受注の入口を整えるだけで、申告シーズンの負担は驚くほど軽くなります。
花屋の受注をデジタル化する最初の一歩は、手書き・Excelの注文管理を卒業:花屋のデジタル化 最初の一歩で解説しています。設備投資には補助金も使えるので、花屋が使えるデジタル化・AI導入補助金2026 完全ガイドもあわせてどうぞ。
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※ 本記事は2026年7月時点の公開情報をもとに、確定申告の一般的な考え方をわかりやすくまとめたものであり、個別の税務アドバイスではありません。控除額・税率・経費の取扱い・適用要件などの制度は変更される場合があり、実際の申告の可否や具体的な処理は個々の状況によって異なります。正確な取扱いは、必ず国税庁の公式情報や、税務署・税理士等の専門家にご確認ください。
